2021-04
第35回日本工業大学建築設計競技【課題発表】4/23更新
第35回日本工業大学建築設計競技【課題発表】
課題:3軒のお一人さまハウス
課題文:
平成生まれの君たちは知っているでしょうか。戦後の建設物資が十分でなかった時代、建築家たちは小さいながらも新しい生活を目指し、豊かな空間をつくろうとしました。1945年から1960年までの15年間は、いわば小住宅の理論と実践の時代でした。こうした社会的背景から、1940年代後半頃には建築専門誌を中心に家族を対象にした50㎡(15坪)前後の小住宅コンペが盛んに催されました。1958年に竣工した菊竹清訓が設計した『スカイハウス』は、社会を構成する最小単位としての夫婦から家族の成長に合わせ新陳代謝する建築でした。しかし、1960年代のわが国の高度経済成長期を経て、核家族化へと世帯の細分化、家族の解体が始まり、今では新たな家族のかたちが模索されています。近年の調査によると東京都心では若年層から老年層の世代を超えた単身者世帯が60%を超えているところもあります。こうした状況から「お一人さま」という生活基盤が社会に定着する一方、新型コロナ禍により分断された個人は人とつながりを求めていることもわかりました。
そこで課題では、現代における単身者=お一人さまの住まいを構想してください。一般的な住まいは、夫婦や家族など複数の他者との関係性をデザインすることに他なりませんが、そうした条件を取り払った住まいは、かなり自由度の高い空間になるはずです。言い換えると住まいの様々なルールを超えた空間であり、また孤と対峙する空間でもあります。人はそこに内なる〈宇宙〉を見出すかもしれません。光や風や雨や音などの自然や植物など環境要素を採り入れた外とのつながりのある、小さくても豊かな空間を創造してください。
想定する敷地に3軒(3人)の戸建ての「お一人さまハウス」を計画してください。3軒全体の敷地面積は180㎡(建蔽率40%,容積率80%)程度、また各住戸の床面積は40㎡程度とします。個々のデザインはもとより、3軒(3人)の関係性とスキマのデザインにも配慮が必要です。
石田敏明